夏絵ココさんインタビュー#02/「加工と無加工が全然違うじゃないか」という声すらも。彼女が見出すコミュニケーションの美しさとは
フォロワー数150万人を誇り、「無言配信」の立役者として「TikTok CREATOR AWARD 2022」で「LIVE Creator of the Year」に輝いた夏絵ココさん。最近では地上波モノマネ番組で芸人がマネをしたことで大バズリ。各メデイアで見逃せない存在になっているといえよう。TikTokのその先へ、“思考実験”がたどりつく場所とは。
(全2回の2回目/1回目から続く)
人間だからこそ生じる日々の変化を、大切にしたい
ーー夏絵さんがずっと掲げている「思考実験」、ずっと気になっていたんですが、一体どういうことなんでしょうか。
夏絵ココ(以下、夏絵) 私がいて、リスナーさんがいて、それぞれがいろんなことを思い巡らせながら“思考”しますよね。たとえば、私は衣装に合わせて毎回メイクを変えています。それは人間にしかできないことだし、私自身もいちばん楽しい工程で。
ーーAIやVTuberとの大きな違いのひとつですね。
夏絵 そうですね。メイクの仕方や服装、髪型など、意図的に変えることもあればコンディションによって変化が生じることもある。リスナーさんがそんな毎日の少しずつの変化・変貌に気づき、そこに対話が生まれることに、思考実験の源があると思っています。
ーーかみくだくと、「それぞれが何をどう感じてもいいし、それを受けた夏絵さんも、何をどう感じてもいい」という、自由度の高いコミュニケーションの一貫という感じでしょうか。
夏絵 「太った」「痩せた」「メイクがいつもと違う」と、毎日異なる印象を持ち、その上で取るコミュニケーションに魅力を感じているし、それが真のコミュニケーションだと思うんです。それをすごく大切にしたいから、どんな声も受け止めるし、「なんでも言ってくれ」という姿勢で挑んでいます。
ーーだから、とにかくかわいく映るような加工一辺倒ではないのですね。
夏絵 かわいいと思われたいとか、考えていないですね。そりゃあ言われたらうれしいですが、「かわいいって言われたい!」という欲望はないんです。だって、人間なんだから当たり前のように毎日違いますもん。
こうして喋っている間だって、私の情報がアップデートされて見る目も変わるかも知れませんし、そうやって毎日毎日変わっていく人間って、美しいな、と思います。
「いじってくれてありがとう」を伝えたかった
ーー5月、夏絵さんが話題になった出来事がありました。6日放送『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』(フジテレビ系)で、エハラマサヒロさんが夏絵さんのものまねをしたことで、審査員席の鈴木福さんが「なんでこの人がバズってるのか分からない人ランキング、僕の中で1位」とコメントし、夏絵さんご自身もTwitterで「うっす」と反応しましたよね。その後、TikTok Liveでもそのことに触れ、さらに話題になりました。
夏絵ココ(以下、夏絵) そうなんですよ。鈴木福さんが遊んでくれたので「私も一緒に遊びたい! 仲間に入れて!」という気持ちをTikTok Liveで伝えてみたんです。「いじってくれてありがとう!」の気持ちで。リスナーさんはその場でとても楽しんでくれました。
ーー猫耳がアイコンの夏絵さんですが、まさに猫のような好奇心を感じますね。
夏絵 そう、好奇心ですね。つついてくれたから、私もコミュニケーションを取りたくて。すべては思考実験なんです。
どんな声にも「存分に遊んでくれ!」と思える理由
ーー昨年12月に「TikTok CREATOR AWARD 2022」で初めて公の場にご出演されたことは、思考実験の最たるものだったと思います。
夏絵 あのときはわくわくしましたね。「いつもの無言配信と同じように、喋らないほうがおもしろいだろうな」とか「絶対に、『加工と無加工が、全然違うじゃないか!』と言われるぞっ」とか考えて。
いちばん大きな思考実験になると思ったので、「もう存分に遊んでくれ!」という状態で出ました。
ーー怖さはなかったですか?
夏絵 いろんなことを思われても「そう思ったことも含め、あなたなんだから、別によくない? 私はそんなあなたを見て楽しむね」と思っていました。そんなふうに怖さがないのはたぶん、共感性が薄いからかもしれません。
たとえば、お友達から「イヤなことがあって、髪を切ったんだよね」という連絡が来たとする。たぶん正解は「イヤなこと? 何があったの?」と聞くことだと思いますが、私は「髪切ったの? 写真見せて」と言ってしまうんです。それでお友達から「いや、違うから」と言われてしまうことが、これまで結構多くて。
そんなふうに、共感性が備わっているみんなの中にいると、「私ってまったく違う生物なんだな」と感じて、人に対して猫ちゃんやワンちゃんの気持ちを理解するような考えが働くんです。
海外リスナーの「これは陰謀か!?」に大興奮
ーー一方で、そもそも言語や文化がまったく違う、海外からの反応はいかがですか?
夏絵 最初に私のところに海外の方が流れ着いてきたときのこと、今でも覚えています。
ずーっと「なんなんだこれは?」と言われていて、そんななか「これは、アメリカの政策の新しい陰謀か?」というコメントがついたんです。「えっ、陰謀!? なにそれ! めっちゃおもしろいな!」と興奮しました。
で、「わかった、私もそれに乗る!」となり、その日から数週間ほどは、もっと陰謀みを感じられるように、機械的に動いてみたり、AIっぽさを出してみたりして遊びました。
ーーリスナーの声で夏絵さんが変化していくのは、すてきなコミュニケーションですね。
夏絵 AIっぽさを出すと、案の定、陰謀を疑うようなコメントが増えて。「ロボットか? これはロボットなのか?」みたいな(笑)。さらに「男なのか? 女なのか!?」という論争も激しくなり、その辺は世界共通の反応でしたけど(笑)。
ーー最近の動画でも、新たなキャラクター「ユナ」を作り、TikTok Liveでオリジナル韓国ドラマ「恋するメモネード」をリスナーとともに作り上げるなど、楽しい試みをされていますよね。
夏絵 そう、あれもコニュニケーションです。みなさんと作り上げていくのがすごく楽しいんです!
「好きになってもらいたい」欲を出した夏絵ココの、次の一手
ーーTikTokという限られたなかで、プラットフォームを生かしたクリエイティビティを発揮している夏絵さんですが、今後挑戦したいことを教えていただけますか?
夏絵 もっと広く共感していただける表現で、アーティスト活動をしていきたいですね。歌を歌ってみたり、文字を書いてみたり、絵を描いてみたり。いまはコアなリスナーさん以外の方にはわかりずらい表現だと思うので、みなさんがひと目でわかるような“夏絵ココ”を展開してみたいと思っています。
ちょっと欲が出てきちゃったんです。もっといろんな人に楽しんでもらいたいな、好きになってもらいたいな、って。
ーー「好きになってもらいたい」、とても清々しい素直なお気持ちですね。
夏絵 TikTokをはじめたころは、「とにかくみんなで遊ぼう!」くらいのノリで、お互い猫ちゃんで、お互いじゃれあっているような感覚でした。すべてが新鮮で、刺激的で。
いまは当時と比較すると、“夏絵ココ”をもっと落ち着いて見てくださるようになり、すると「この人、結局なんなんだろう?」という空気が感じられるようになりました。だから、歩み寄りたくなったんです。猫ちゃん同士ではなく、人間として。
ーーその変化もまた、思考実験の一部なんですね。
夏絵 そうですね。これからの自分の変化も、みなさんの変化も、とても楽しみです。
(撮影:佐賀章広)
@natuecoco 🎢🎢🎢🎢🎢#natuecoco #夏絵ココ #uwugirl #無言配信の人 #猫系女子 #バトルしようぜ ♬ オリジナル楽曲 – 莉犬くん@すとぷり
※動画は夏絵ココ公式TikTok『@natuecoco』より