夏絵ココさんインタビュー#01/頭の中のイメージに近づくため「照明選びに1日がかり」こだわりぬいたキャラの意外なモデル
フォロワー数150万人を誇り、「TikTok CREATOR AWARD 2022」で「LIVE Creator of the Year」に輝いた夏絵ココさん。カメラを前に、まるで仮想現実を思わせる世界観で、ひとことも喋らず配信をやりきる「無言配信」では、同時視聴者数5万人を記録したこともあるパイオニア的存在だ。そんな彼女の、クリエイティブの源とは。
(全2回の1回目/2回目に続く)
配信1分前まで、照明の色に悩み続ける
ーー夏絵さんといえば「無言配信」ですが、いちばんのこだわりはどんなところですか?
夏絵ココ(以下、夏絵) まず照明です。照明の色を、その日のテーマに合わせて組んでいます。白系の衣装でかわいいメイクをしていたら、ピンク色で、クールな印象の日は紫や青、森にいそうな格好をしていたら緑、とか。見る人がいちばん目につくのは、私の姿と色だと思いますし、色の印象はキャラにダイレクトに反映されると思うので、すごく大事にしています。
ーーどれくらい機材があるんでしょうか。
夏絵 いろんなものを試しすぎて未使用機材もたくさんありますが、いまレギュラーで稼働しているのは4種類です。常に照明のトレンドをチェックしていて、かわいいライトがあったらすぐに買って、顔に当ててみたり、背後から当ててみたり、いろいろなパターンで試してみます。
ーーたとえば、「今日はこの衣装でいこう」となると、1日がかりで考えたり?
夏絵 そうですね。1分前まで妥協したくなくて、ライブ配信30分前はもうカツカツです。頭の中で「これにしよう」と決めていざスマホに映すと、想定していた光とまったく違ったりするので、納得がいかなくて。ギリギリまで粘って、ずっと照明をイジっています。
妥協できない性格なんですよ。そこが不器用だなと、自分でも思います。
プライベートではお気に入りの森で撮影
ーー当初から、照明の大切さに気づいていたんですか?
夏絵 そうですね。私は元々カメラが趣味なんです。一眼を片手にいろいろな場所に行ったり、人物を撮るために照明を組むのも好きで。そういうとき、キャラ物のコスプレだといつになく力が入るので、プライベートで撮影していても照明を大掛かりにしてしまいがちです。
ーープライベートではどんな撮影をしていたんでしょうか。
夏絵 森に行ったりしていましたね。まずは、自分が撮りたい日差しが、きれいに差し込む森を探すんです。スタジオでも、十字の窓枠があって、顔に差す光が十字になっているところがタイプですね。
ーー光を妥協すると、写真にもちぐはぐさが表れたり?
夏絵 わかりやすく言うと「今日、盛れてない…!」となりますね。
ーー好きな森があるんでしょうか。
夏絵 鬱蒼と生い茂ったファンタジックな世界観で、乗馬もできる森があるんですよ。ざわざわとした、理想的な木々なんですよねえ。
ーー理想のファンタジー世界を常に頭の中にありそうです。
夏絵 頭の中には、いつも人以外のなにかがいます(笑)。エルフとか、人魚とか、妖精とか。そういった理想の姿があり、そこに向かって自分を作り上げていきたい、という感じです。
CLAMP作品のキャラに感銘を受け「やりたい!」
ーーいまの夏絵さんの「猫耳にロリータファッション」にたどり着いたのも、頭の中を具現化した結果ですか?
夏絵 この子は、CLAMPさんの「ちょびっツ」というマンガの登場人物「ちぃ」がヒントです。
ちぃは人型パソコンで、主人公とはぐれた際に変なスカウトに捕まってしまい、覗き部屋に連れていかれてしまうシーンがありまして。そのときのちぃが、きょとんとした顔をしながら人間がやらないような行動に出て、でも外見は完璧な人間で……というそのコントラストがすごく頭に残っていて、「私もこれをやってみたい」と思ったのが、きっかけだと思います。
私のほかのキャラクターも、そんなふうに自分の頭の中の「これ、やりたい!」を目指して作り込んでいます。
ーー表現方法として、VTuberという手段もあったかと思いますが、「自分でやる」ことに意義があるのですね。
夏絵 自分がいちばん自分自身をよりよく表現できることを知っているし、生身の体を使ったほうが、表現が多彩にできると思ったんですよね。VTuberの良さと生身の人間の良さはベクトルがまったく違うと思いますが、私は生っぽさが好みだった、という感じです。
ーー生身だからこそ、どうしても納得できないコンディションの日もあるかと思いますが、どうしていますか?
夏絵 ダメなときはやらないと決めています。自分が納得いかないものをリスナーさんに見せることができないというか、そんなものを見せられてもイヤだと思うんです。
気づかぬうちに、NOまばたき
ーー妥協がないからこそ、ここまで作り込んだ世界を続けられるのだと思いますが、個人的にすごいと思うのは、夏絵さんのまばたきについてです。無言配信でキャラクターになりきるとき、ほとんどまばたきしていないですよね。
夏絵 ああ、たしかに。配信が始まるとモードに入るというか、あの仕草をすると、自然と目を閉じることができなくなるんです。リスナーさんからも言われたことがあって、そのときに初めて気づいて「私、してないんだ!」と驚きましたね。
ーーもし自分が「はい、今から夏絵さんの無言配信をやってください」と言われたら、ずっと目まぐるしく考えると思うんですよ。「次にアレして、あの動きして、これやって……あああどうしよう!」と。でも、夏絵さんからはそういった水面下の足掻きがまったく見えません。
夏絵 私は、ギフトをいただいたら声を出して反応していますが、このときのやりとりって、「イエーイ!」と来たから「イエーイ!」と返しているというか、考えるより先に呼応する感覚です。いろんな人と挨拶やハイタッチしている感じが近いかもしれません。ハイタッチって、考えてやるものではないですもんね。
ーー今年4月には初の対面イベント「夏絵ココ展〜リアル思考実験〜」を開催し、1時間の無言パフォーマンスに挑戦しました。私も拝見しましたが、夏絵さんはお客さんと交流しながら猫のように自由気ままに動き続け、ライブ配信がそのまま現実にスライドしたような独特の緊張感でした。
![](https://buzz-tok.com/wp/wp-content/uploads/2023/06/S__90088028-scaled.jpg)
夏絵 あれは台本もなく、1時間アドリブでやったんですが。
ーーえ! 全部アドリブですか!?
夏絵 はい、普段は1時間座りっぱなしでライブ配信していますが、このときは1時間動き回ることができて、いつもより可動域が広くてむしろ楽でした。
アートを吸収し、動画に昇華
ーー逆に楽……。来ていらっしゃった方から、どんな感想が届きましたか?
夏絵 「新しすぎて、『これが夏絵ココだ!』と思った」とか、「現実の世界ではない場所に連れていかれて、夢のような感覚だった」とか、「忘れがたい、覚えていたい。けど、夢のようだったから、いつか記憶からなくなってしまうんだろうというのが、今からもうわかる」とか。すっごく厚みのあるレポートをいただき、ほんとうにうれしかったです。
ーー普段インプットをしていないと、なかなかできないパフォーマンスだと思います。感性はどんなふうに磨いていますか?
夏絵 美術館を巡ってアート作品に触れるのが大好きで、よく前情報なく観に行っています。
ーー最近、心を動かされた作品は?
夏絵 ポーラ美術館の企画展「部屋のみる夢ーボナールからティルマンス、現代の作家まで」で観た作品です。空間が隙なく出来上がっていて、その光景が美しすぎて。窓枠の影が絵画の横に重なるように照明が組まれていたり、木漏れ陽が差す壁の横に、木漏れ陽をモチーフにした作品があったりして。
そういった絵画に、筆の通った跡を見つけると「この人は、この一瞬に美しさを見出して描いたんだな」と、作者の臨場感を感じることができて、没頭してしまいます。
ーー現実と非現実の狭間にいるような、不思議な存在感の夏絵さんの源が、垣間見えた気がします。
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6月23日配信の後編では、話題となったモノマネ番組への“アンサー”や、「思考実験」の真意などについてうかがいます。
(撮影:佐賀章広)
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※動画は夏絵ココ公式TikTok『@natuecoco』より